無人 キャッシング

無人機の実現化には技術力が不足していた80年代

93年に登場、今ではごく当たり前に普及した無人契約機ですが、その最初のアイデアは80年代にさかのぼります。アコムは86年に、次代に備えた新しい営業形態を整えようと、全社横断的に「新営業プロジェクト」を設置したのが始まりです。

 

このプロジェクトは「消費者金融が今後生き延びるために、あるいは顧客の支持を受け続けるためにはどのような戦略が必要か」を集中的に研究する目的を持っていました。具体的には「より早く、より安く、より簡便に」という消費者ニーズを満たすための戦略作りが行われ、その研究の中から「24時間ATM稼働」や「金利の引き下げ」など、今につながるアコムの経営戦略が生まれることになりました。

 

「より簡便に」という消費者ニーズを満たすためには拠点数を増やさねばなりません。しかし、拠点を増やすといっても従来型の有人店舗を増やしたのではコスト的に限界がある。そこで「低コスト、省スペース、省力化」の三点でアプローチすることになりました。その中から出てきたのが無人店舗という考えでした。

 

実際に「むじんくん」の原型になったのは、プロジェクトに参加していた若手社員が長くあたためていたプランだったと言われています。つまり「店員のいない、小さな店で、自動化をすすめた装置によって、店頭手続きをすべて代行させることはできないか」というもので、その無人店舗のイメージをチーム全員で膨らませていったそうです。

 

今でこそネットの普及で審査の方法は変わりましたが、それまでの消費者金融の場合は対面与信を行うので、人に会わないわけにはいきません。対面与信にするのと同じように細かなところまで全部機械に置き換えられないかというという構想でした。そうすれば、人と会って話すのは苦手という人の恐怖心も払拭できるし、これまで遠慮していた人も取り込めるかもしれない。この発想が、むじんくんの原型をぼんやりと形作っていったと考えられます。

 

そうは決まったものの、当時の技術力では、期待できるほどの効果を得ることができなかったそうです。現在のようなデジタル画像技術が進歩していなかったのが大きな要因でした。

 

機械による与信とはつまり双方向の画像、音声伝送の速度・精度がどれほど優れているかが鍵となります。無人店舗に入ってくる顧客の顔の識別からはじまって、運転免許証や保険証の確認まで画像伝送技術がポイントになります。今でこそ当たり前になったテレビ電話のようなものなので、その情報をいかに速く正確に送れるかが問われますが、当時はデジタル伝送技術はまだ未熟なものでした。

 

遠隔地から画像を送った場合は時間もかかるし、しかもその画像は不鮮明でとても実用に耐えるものでなかったようです。遠隔操作になると画質が極端に悪くなり、とても書類を確認できるほどではなかったことが大きなネックとなり、そのために研究は中断を余儀なくされ「むじんくん」誕生はしばらく待たねばならない状態でした。

 

つまり86年に無人機の構想はあったものの、当時の技術力では実用に耐えうるものではなく、正式リリースの93年まで時間が空いたというわけです。

 

技術が追いついてきた90年代

無人機に必要となる技術が追いついてきたのは、91年の終わりごろ、「むじんくん」のアイデアが出てから5年が過ぎた頃です。

 

マルチメディア関連技術の急速な進歩で画像伝送の精度が向上し、これなら無人契約機開発もやれそうだと目処がついたのです。すでにアコムのトップからはプロジェクトの答申に対して前向きで取り組めとの指示が出ていたために、研究は休むことなく続けられていたそうです。

 

92年になると、アコムはATMなどを開発している国内の有力なハイテクメーカーに呼び掛け、無人契約機のコンセプトを伝えるとともにコンペを実施、アイデアと見積もりを競わせたが、その中で最後に残ったのがNECでした。

 

アコムとNECはそれからすぐ共同開発に着手し、店側のブースとコントロール側の装置について研究・開発に入りましたたが、アコム側が主張したのが、店頭でやっている対面与信をそのまま機械に置き換えることでした。

 

そのために対面与信の細かな部分について、メーカーと一つ一つ話し合いながら詰めていく必要がありました。例えば、「質問項目の内容」「その数」「どういった形で聞くのか」「本人確認の方法」「信用情報センターの活用の仕方」「貸倒率の設定」「偽造対策」はどうするのかといったことです。

 

中でもアコムが注意を払ったとされているのは、プライバシーの保護と安全性の問題です。

 

ブースの中で一人きりになって安心して審査を受けるためにもプライバシーは保護されなくてはいけません。他人の侵入などあってはいけないのです。そのため、まずドアに鍵をかけることが必要でした。それを遠隔操作でボタンを押せばドアに鍵が掛かるように設計。

 

また、異常を知らせる非常ボタンと予備の非常ボタンをつけました。さらにインターホンも設置したのですが、当初はお客さんの声はパソコンに内蔵されているマイクが拾うからインターホンまで必要ないという声もあったそうですが、マイクとインターホンとは別系統の回線だから、もしものことがあった時にもどちらかが使えるよう安全性を第一に考えてインターホンも設置したという経緯があります。

 

また、監視カメラは店舗内に平均4台。多いところになると3坪の中に6台設置しています。その為、むじんくん初号機は「なんでそこまでやるのか、過剰装備ではないか?」という声も多かったといわれています。

 

しかしその背景には、全く初めての機械でもあり、利用者がどんな反応を示すか予想がつかない、何が起こるかわからない。官庁の許可を得るにも慎重のうえに慎重を重ねたい。との考えがあったので、安全性を第一に考えてこれくらいの設備は必要だと判断した結果、プライバシーと安全性を考慮した設備となったのです。

 

また、設備だけでなく対面与信、店頭でのやりとりをそのまま忠実に機械に置き換えようとしたので、質問項目も20項目以上があり、実際にやってみるとその数の多さにうんざりするほどだったそうです。しかしこれも従来の店舗で実施していた「対面与信そのまま」を持ち込もうとした結果だったといえます。

 

開発費については、当時1台あたり1600〜1700万円くらいは掛かっていると思われています。アコムはそれを最初の段階で4台作っています。もちろん店舗の端末とコントロール側の装置を合わせての値段ですが、当初からの人件費などを考えると決して安い費用ではありませんでした。

 

今でこそ多少はコストも抑えられているとは考えられますが、それでもこの高額な無人機を設置するのには、経営規模が小さな消費者金融はでは難しいといえます。従って、TOPページでも触れたように、大手で安心して利用できる消費者金融の目安として「無人機の設置台数」という項目が挙げられるのです。

 

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